東京都立大学ワンダーフォーゲル部OB会

大日岳遭難事故検討会


<遭難事故発生前、大日岳からの剱岳  ここは雪庇の上だった>

大日岳遭難事故とは
 

2000年3月5日(平成12年)に北アルプス・大日岳山頂付近で雪庇崩壊に伴うなだれに巻き込まれ 東京都立大学・2年生 内藤三恭司さんと神戸大学・2年生 溝上国秀さんが遭難死した。
この遭難事故は、文部科学省・登山研修所の大学山岳部リーダー冬山研修中に発生した。 この研修には引率講師ら12名と、32名の研修生とが1週間の予定で参加しており、事故発生当時は多くの講師と研修生たちが山頂付近の雪庇上で休憩していてそれが崩壊した。
なお、この研修は30年以上の歴史があり、過去に大日岳へ14回登頂していた。

 
北アルプス大日岳遭難事故調査委員会(座長;秋田谷英次氏)が、2001年2月に事故調査報告書を発表した。この調査報告の結論は、概略「大日岳山頂付近の雪庇は、この年に限った特異な形状だったため、誤って雪庇の上に休憩した。 この雪庇の崩落は誰にも予見できなかった。」であった。

損害賠償請求裁判とその後の遺族と文部科学省の和解
   
文部科学省は北アルプス大日岳遭難事故調査委員会の 事故調査報告書」をもとに、国に責任は無かったとしたため、 遺族は「事故の真相究明と謝罪を求め、損害賠償を求める訴えを富山地裁に起こした。
この裁判と並行し大日岳遭難事故の真実を究明する会が中心となり、同様趣旨の署名活動を展開。30万筆を越える署名が集まった。

富山地裁は2006年4月に国に賠償を命じる判決を出した。その後、国側は名古屋高裁金沢支部に控訴したが、2007年7月に遺族側の主張に沿った和解が成立した。

 
ワンダーフォーゲル部OB会は、北アルプス大日岳事故調査委員会の会議議事録、過去の研修参加者からのヒヤリング、情報公開請求によって入手した登山研修所の文書などをもとに、独自調査を行った。
そして、遭難事故の遠因は、登山研修を講師に任せきりにした登山研修所の組織と運営にあったという結論とした。

 
冬山研修再開に向けて、2007年12月より安全検討会が開かれ、数回の審議の後、2008年6月に中間報告をまとめた。 この中間まとめは、HP上に公開され、パブリックコメントを募集した。
 
 
中間まとめとOB会による事故調査報告書を付き合せ、検討。「安全確保の基本的な対策は評価できるが、具体的な対策は、対策の抜けや視点のずれが目立つ。 これは、原因や課題を明確にせず対策を検討するという矛盾の結果である。
登山研修所の大学山岳部リーダー冬山研修会に 係わる安全検討報告書」について/OB会 
 

本報告書は、「遭難事故の反省を踏まえて」という前提で作成され、総論としては良くまとめられたと考える。 しかし、遭難事故原因を確認しないまま進んだためであろう、「具体的な安全対策」での検討の抜けや踏み込み不足が気になった。 ただ、一審判決や和解条項が添付されたことは評価したい。
今後は、登山研修所に「シラバスの作成」という大変な作業と研修体制の再構築という役割が任された。検討報告書の総意が生かされることを願い見守りたい。

<大日岳周辺地図 >

 最近のニュース
2008.08 「大日岳遭難事故安全検討会・最終報告について」 大日岳遭難事故遺族一同
2008.07.30 登山研修所の大学山岳部リーダー冬山研修会に
係わる安全検討報告書
 文部科学省より公表
 
2008.07.16 安全検討会最終まとめ傍聴/ 江守(5期)
2008.06.24
安全検討会報告書・中間まとめに対する意見書送付 OB会
2008.05.26
第6回安全検討会傍聴/ 江守(5期)
2008.04.30
第5回安全検討会傍聴/ 森(9期)
2008.03.27
第4回安全検討会傍聴/ 森(9期)、服部文祥

 ほかとのリンク
  大日岳遭難事故を考える